年齢退行療法について

年齢退行とは、トラウマとなったできごとの解決可能な場面へ、現在から過去へさかのぼって探っていくものです。現在の苦しみの原因が、思いがけない過去の出来事に由来していることがあります。
 例えば、はっきりと理由はわからないが、特定の場面で無性にいやな感情が湧いてくる・・・・・・そんなことはありませんか?いやな思いをした過去の出来事を、「とっくに解決したこと」と思い込んでいても、「感情や感覚」の潜在意識の中で、(例えば子どもの頃感じた)心の痛みの感情・感覚が残っているのです。その感情・感覚が、何十年経った今でも、何かのきっかけで刺激され、人を苦しめるのです。子どもの頃のトラウマで、老年期になった今も苦しんでいる方がおられます。それほど、幼年期に植え込まれた感情は、長きにわたって人の心や生活に影響を与えます。

 例えばこんなことがあります。
 子どもの頃、誤って弟に怪我させてしまったK君は、家族のみんなが弟の出血を心配している中で、どうしてよいかわからず一人立ちつくしておりました。家族は出血している弟にばかり気をとられ、兄のK君の狼狽に気づかなかったのです。その時、K君は無意識に 「ぼくは悪いことをした。ぼくなんか幸せになっちゃいけないんだ。」という信念を潜在意識に植え込んでしまいました。(9歳頃まで、子どもは潜在意識そのものの存在です)

大人になったK君は、素敵な女性と恋愛しそうになると胸さわぎが起こるのです。
「ぼくなんか好かれるはずがない。きっとうまくいかない。」と不安になり、怖れに支配されて恋愛体験から尻込みしてしまいます。
しかしK君は、どうして自分はいつも恋愛がうまくいかないのかわからず、ますます
自信を失ってしまいます。
 潜在意識に植え込まれた 誤った信念が、「自分が自分に仕掛けた罠」となって大人になってまでK君を苦しめていたのです。
 子ども自身が仕掛けたとは限りません。子どもが持つ感情・性質・才能のうちのあるものは、評価されずに家族によって「よくないものだ」と扱われることがあります。親が評価しないものや親の機嫌を損ねるものは、抑圧されてしまいます。親に愛されるために。
 子どもは親に支持され愛されるため、大事なものを自覚なく抑圧してしまいます。
 または、親の離婚の危機など、家族の切実な現状から大人の目をそむけさせるために 無意識に「悪い子」を演じ、「困った子」とみなされる自己を形成してしまうことがあります。
 あるいは、親に反抗して要求を押し通すことに成功したり、すねたり、引きこもることによって親の注目を得ることに成功した子どもがおります。
 家族によって与えられた誤った信念を受け入れなければ愛されなかったかもしれません。家族内でのバランスをとるために受け入れたかもしれません。このように家族間で形成された自己パターンは、大人になっても続きます。
 理解されずに抑圧されてきた「本来の自分の感覚」は、気づいてほしくて、やがて存在を主張するようになります。それが、悩みや症状として表現されることになります。

 潜在意識はインプットされてきたものに応じて、そのまま自己実現しようと働き続け、 潜在意識にインプットされた通りに人生を創ります。何がインプットされているか、それが 大事なのです。 しかし、潜在意識の記憶は入れ替えることができます
 問題の根っことなっている記憶を催眠状態で引っ張り出して、大人になった自分が追体験すると、子どもの頃に感じた感情・感覚とは解釈が変わります。例えば、過去の実際の場面では「言えなかったこと」を、追体験の場面で相手に言うことによって、言えた後の相互の感情や、相手の反応を体験することによって、過去とは違う『現在の自分』への新たな自己評価が可能になり、そのセルフ・イメージの体感が癒しとなります。このようにして、潜在意識の中で長い間手放せなかった感情を解放し、新たな理解・感情・感覚を植え込み、根付かせます。こうすることで、問題の根っこが解決します。根っこが解決すれば、ドミノのように、それにまつわる枝葉の問題が解決していきます。
 催眠状態では、クライアントさんの潜在意識が「問題の根っことなるその時期」を、 深い記憶の蔵から探り当てます。その確実さは人智を超えた不思議なもので、驚くことがたくさんあります。潜在意識は有能で、決して間違った所へは連れて行きません。また、クライアントさんの幸せのために働いてくれるので、クライアントさんを耐え難い恐怖に陥れることはありません。探り当てられた潜在意識の深い部分の傷跡を体験し直すことで、新しい気づきや解釈が得られ、問題解決につなげられるのです。
 ただし、問題の根っこが単一でない場合、複雑な場合があり、このような場合には、1回のセッションでは解決しきれない場合があります。