女子寮の誰もが異性とお付き合いしているのか、週末は閑散とします。

なかなかご縁に恵まれなかったUさんは、毎週末、寮の留守番でした。

どうして自分には男性とご縁がないのか、焦る気持ちはありましたが、

「お天道様がもっと良い人はいないか、もっと相応しい人はいないかって

探してくれているからに違いない。 お天道様にお任せしよう。」

と、計らいを信じて委ねていたそうです。

 

そんなUさんは、2度目のお見合いで 相手の方と目が合った瞬間、

この人と結婚するって決まっていたんだ!」

と直感したそうです。

実は相手の方も、目が合った瞬間に同じことを感じたそうで

翌日再びお会いしたところ、プロポーズされ、

その翌日には婚姻届けを書く…という電撃結婚をしました。

 

Uさんの夫になるお相手のPさんは、職場の方たちにUさんを

「コイツは俺から見たら、子どもみたいなものなんだ。」

と言って紹介しました。実際には年齢差7歳ですが、

なぜか自分の子どものように感じてしまうそうです(註1)。

 

Pさんは気持ちの優しい人でした。

機能不全家族で育ったUさんは、自分を子どものように見えると言う夫の、

その眼差しがあるだけで 「優しい親に見守られている安心」を感じました。

長い時間を要したものの、知らず知らずに一緒にいるだけで、

まるで育て直しをされているように 癒されておりました。

 

Uさんは、ある日、夢を見ました。

自分は首から下が動かない 重度の障害者でした。

夫らしき男性が、スプーンで一口ずつ食事を食べさせてくれておりました。

この時スプーンを口に運んでくれていた人は、夫のPさんでした。

全く動かない身体で、全介助が必要な生活を、この人に支えられて生きていました。

食べさせてもらいながら、何もかもが有難くて、有難くて、

「今度生まれてくるときは、動く体に生まれてきたい。

 そして今度は、私がこの人に ご恩返しがしたい。

 神様、お願いです。今度生まれてくるときは、動く身体に生まれさせてください。

 そして、もう一度、この人と出会わせてご恩返しをさせてください。」

そう祈る思いで、涙をこぼしながら 食べさせてもらっておりました。

 

今、夢を見ている…これは夢じゃない。本当にあったことだ!

これと同じことを実際に体験したことがある…強く感じた 

の時、目が覚めました。

涙で枕が濡れておりました。

 

寝ている時に、夢で前世を思い出すことはあることです。

ベストセラー「前世セラピー」の著者であるブライアン・ワイス博士も、

初めて自分の前世を知ったのは、

マッサージをしてもらいながら うたた寝した時だったそうです。

 

その後、Uさんは前世セラピーを受けて、夢で見た前世の顛末を追体験しました。

 

その前世でもUさんは女性で、Pさんは隣家に住む幼馴染の男性でした。

両家は親同士も仲が良く、普段から家族ぐるみで親しくしておりました。

Uさんは15歳で落馬し、首から下が動かない重度の障害を得ました。

Uさんの世話をしていた両親は、Uさんが17歳の時に事故で急死し、

動けない身体のUさんは 独り残りました。

見るに見かねたPさんは、毎日Uさんの面倒をみてあげるようになり、

そのまま結婚しました。

 

Pさんは毎日、動かない関節が固まらないように動かしてあげ、

Uさんの全身のマッサージをしてあげました。

そればかりでなく、毎日Uさんのお化粧もしておりました。

 

その暮らしが何年も経ったある日、

Pさんは、Uさんを「お出かけ」に連れて行くことにしました。

座るか 寝ているか…しかできないUさんにとって、

お出かけなんて 滅多にありません。Uさんは 嬉しくて大はしゃぎでした。

 

よく晴れた日、連れて行かれた先は、河でした。

ボートに乗せてもらって 嬉しくて はしゃぐUさん。

片や、Pさんは緊張した面持ちで じっと うつむいています。

それを見て、Uさんは全てを察知しました。

夫は、毎日の妻の介護に、疲労困憊していたのでした。

死んでくれ」と思って ここへ連れて来たのだと分かると、

 

私、死んでも いいよ。

 今まで 毎日 面倒を見てくれてありがとう。

 私が死んで あなたが楽になるのなら、私はそれでいいのよ。(註2)

 あなたには、感謝しかない。本当よ。だから苦しまないで。

 私は自分で水に入れないから、押して。

 あなたは、決して 苦しまないでね。

 私はあなたに、感謝しかないの。本当よ。

 あなたのお陰で 幸せだったわ。 今まで、本当にありがとう。」

夫に身体を押されてバランスを崩して川に落ちる時、

Uさんは不覚にも 「キャーッ」と声を出してしまいました。(註3)

 

(註2)

『私が死んで あなたが楽になるのなら、私はそれでいいのよ。』

 

今世でのこと

新婚当時、Uさんの友人が、

「旦那さんと一緒に寝るって、すごい信頼関係だと思うの。

 絶対に≪寝首をかかれる≫心配がないって、信頼しているからよね。

 それって、すごい信頼だよね。」

と言った時、

違うよ。私は、殺されてもいいから 一緒にいるんだよ

 私が死ぬことで 旦那さんが幸せになるのなら、私は死んでもいいよ。」

と、Uさんは口走っていたのです。

友人は、

「どうして 奥さんが死ぬと 旦那さんが幸せになるの?

 そんなこと あるわけがない。何を言っているのか理解できない。」

と言いました。

Uさんも、どうして自分がそんなことを言ったのかわかりませんでしたが

説明しようもなく、本心から出てきた思いでした

 

私たちの日常には、≪説明できないけれど本当のこと≫があると思います。

それは、この話のように、前世に関わりがあるのかもしれません。

 

(註3)

Uさんは不覚にも 「キャーッ」と声を出してしまいました。

 

今世で、

Pさんは、なぜか 女性の悲鳴をとても怖がりました。

何かの拍子にUさんが 「キャッ」と声を上げただけで、

普段もの静かなPさんが「うるさい!」と真顔で怒るのでした。

 

どうしてそんなに怖がるのか尋ねても、本人は理由がわからないのですが、

前世で私が川に落ちた瞬間の悲鳴が、魂の記憶にあって、

自責の辛さとリンクして 怖かったのでしょう。

 

その前世のことをUさんがご主人に話してから、

女性の悲鳴を怖がらなくなったそうです。不思議なことに。

 

(註1)

実際には年齢差7歳ですが、なぜか自分の子どものように感じてしまう。

 

これにも理由がありました。

最終的には妻の介護に疲れ果てて、死を願ったとはいえ、

長年、全く動けない妻の全介護をして献身することは、

生易しいことではなかったはずです。

他にも方法が模索できたはずです。それなのになぜ…?

それには 理由がありました。

 

更に過去の前世に遡って 

Uさんは、フィンランドに住む、ウェーブのかかった金髪の、

それはそれは可愛らしい 3歳の女の子でした。

両親が目を離した所で犬に追われ、泣きながら走って逃げているうちに、

足を滑らせて 崖から転落してしまいました。

そして、見つかることはありませんでした。

両親にしてみれば、

≪ある日突然、神隠しに遭ったように愛娘を失った≫のです。

その心痛は、生涯 脳裏を離れることがなかったでしょう。

その時の母親が、Pさん(今世の夫)。

父親は、今世の機能不全家族の中でUさんを可愛がってくれた「祖父」でした。

 

遠い過去に、3歳の愛娘を突然失った強烈な悲しみを 魂が宿していて

全身動かない障害を得ても、そのUさんは

やっと会えた、魂が探し求めていたあの愛娘≫だったのです。

魂の記憶ゆえ無意識に、簡単に放棄することができなかったのでしょう。

 

出会って数日の電撃結婚をして、そのまま30年以上も仲睦まじく

結婚生活が続いている…かのように見えるPさん・Uさん夫妻にも、

実は その間、人には言えない艱難が幾つもありました。

離婚理由になり得ることも 幾つもありました。

それでも互いに「離婚」という選択肢がありませんでした。

それは、たとえ前世の因縁を知らなかったとしても、

どこか深いところで 魂が大恩を覚えていたからかもしれません。

(他の前世で何度も Pさんが Uさんに助けられてもいた)

 

何があっても、Uさんは 子どもたちに Pさんを悪く思わせなかった。

自分が悪者になってもよかった。

子どもたちに「お父さん大好き」になってもらいたかったのです。

それは理屈抜きで、無意識のうちに、

首から下が動かないあの人生では 子どもが産めなかったから、

次の人生でこそ子どもを産んで、

子どもたちに慕われる人生の喜びを夫に体験してほしいという

魂の願いがあったからではないかと思います。

 

私たちは、このように ≪魂の願い≫を宿し

辛苦に耐える力を持って 生まれてきているように思います

 

今は、「自分なんか、何のために生きているのだろう」と

虚しさを感じることがあるかもしれません。

多くの人は、そう感じながら生きていると思います。

私も、そうでした。

長い間、働いても 働いても報われない 苦しい日々でした。

何のために生きているのか…と嘆き、

幸せそうな人を羨みました。

しかし、生き抜いてきた今、確実に実りを得ております。

実りは、人によってそれぞれ異なると思いますが、

今は辛苦の真っただ中だとしても、

生き続けてさえいれば、実りの時期が訪れます。

 

その時、あなたは 何を 喜びたいですか?

誰と、何を わかち合っていたいですか?