出産は分娩室で…、病気で命を終えるときは病院で…、と私たちは思い込んでいるのではないでしょうか。

久しぶりに会った友人が、お産の時の様子を話してくれました。
安心して生める所を選んだ結果、そこは「助産院」だったそうです。
彼女はそこで、ぬるま湯の浴槽で「水中出産」を行いました。
陣痛の痛みのあまり、呼吸することを忘れてしまいそうになると、
助産師さんが歌を歌ってくれるので、それにつられて一緒に歌ったそうです。

分娩の時の呼吸法は、あの、「ふっ、ふっ、はぁ~」じゃなくてよいのですね。
を歌いながら、自然に呼吸ができる
歌いながら楽に産むなんて、そんな出産の仕方があったのですね。
助産院で出産した友人は他にもおりますが、「歌いながら水中出産」は知りませんでした。

折りしも昨日は、ユーキャン主催の講話会で、遠藤順子先生(故遠藤周作氏夫人)と
内藤いづみ医師(在宅ホスピスの先駆け)のお話を拝聴したばかりです。

そこでも、内藤先生は、
「分娩室」の写真と、ICU(集中治療室)の写真を並べて見て、
どちらも似た環境だと気づかせて下さいました。

そして、このような所で人間が生まれることに不自然さを感じないか、と呼びかけて下さいました。
このようにチューブで繋がれて人生を終えることに疑問を感じないか、とも…。

私もかつて、手術室のようなあの分娩室で産むのが怖かったです。
しかも、初めての陣痛に一人で耐える私は、時折見に来てくれるナースに
「痛いのが怖いです。誰かそばにいて頂けないのでしょうか」
と言ったら、
「陣痛は誰でも痛いのです。みんな、我慢してきたのです。
 我慢ができないのは、わがままですよ。」
と言われました。

今は、出産シーンも進化して、そのようなことはないかもしれませんが…。


内藤先生は多くの御著書で、在宅で治療を受けながら、人生の最後の日まで
日常の生活を家族と過ごす患者さんを紹介しております。
昨日は、スクリーンでその様子を見せて頂きました。

末期のガン患者さんが大工仕事を終えて、
「俺、本当にガンかなぁ…」
と つぶやきながら家に帰る
のを見て、
いざとなったら私も、大事な家族と一緒に、このようにして人生を大切に暮らしたいと思いました。

内藤先生はおっしゃいます。
人間、生まれるときと死ぬときは、もっと医療機関から離れて生活の場に戻れる

医師不足が問題になり、子どもを生む病院がないと騒がれておりますが、
それらは確かに社会問題ではありますが、
今一度私たちは視野を広げて見ることができるのではないでしょうか。
それも、価値観を広げることですね。

出産に特別な問題が予想されていないのであれば、
安心して赤ちゃんを産める場所は、病院だけではなさそうです。
もっと多くの人に、素敵な産院を知ってほしいですね。

中井貴一主演のTVドラマ「風のガーデン」をご覧になりましたか?
そこでも、緒方拳 扮する素敵なお父様が在宅ホスピス医でした。

在宅で人生を終えることが、もっと一般化するといいなぁ…と願っております。

そして、「死ぬって、医療の敗北」なのでしょうか?
「死ぬって、本当に不吉なこと?」
「死は本当に怖いの?」
「死」が、まだまだ理解されていないために、死の恐怖におののく人に
「怖れることはないですよ」と、手をとって伝えたいと願っている私です。

病める人の体の痛みだけでなく、
「どうして死ななければならないの!?」
「どうして私が!?」という魂の叫びに寄り添うケアをしたいです。

人生で遣り残したこと、
和解したい人がいる、 叶うなら会いたい人がいる、
話しておきたい思いがある、
そのような思いに誠実に寄り添う人を必要としている人がいる、今、この時も。


<11月3日追記>
このブログを読んだ方からメールを頂きましたのでご紹介します。

「私の友人の子どもは、誕生時の記憶を語ることがありましたが、

 『ぼく、ママのお腹から生まれたとき、
  大きな電気がまぶしくて、怖かった…。』 と言いました。

 産婦だけでなく、生まれてくる赤ちゃんも 「怖い」と感じるのですね
 私も分娩室での出産に疑問を感じ、自宅で出産をしたいと考えておりましたので、
 同じようなことを考えている人がいたと分かって嬉しいです。」