十年以上も前のこと、
席に着くなりその方はおっしゃいました。
「僕は世界中で一番弱い男です。」
本人の了解を得てお分けしております。
父親のスパルタ教育で、殴られて育った彼は、父親が怖くて怖くて・・・。
職場で上司に注意されると、父親に叱られたことがフラッシュバックし、
上司が怖くて怖くて…、
ひと月も前に上司から渡された「個人評価票」をいまだ開封する勇気がないと言います。
そこには、怖い怖い上司が自分をどう評価しているかが書かれているのです。
場合によっては、心が折れて会社へ行けなくなると思ったのかもしれません。
催眠セラピーの終盤、マスターが彼に言ったそうです。
『お前がリーダーになれ!』
(何を言っているんだろう。こんな自分がリーダーになんか、なれるはずがない。)
セラピーで不思議な体験をして勇気を得たのか、
帰宅してから思い切って彼は「個人評価票」を開封してみました。
そこには、なんと
【将来チームリーダーとして有望。高い資質がある。】と書かれていたそうです。
2度目に訪れた彼は、席に座るなりニコニコして私に言いました。
「この建物が見えただけで、
むしょうに嬉しくて、嬉しくて、ひとりでに笑ってしまうんです。」
その方はその後、年1回ほどのペースで、自分を見つめ直すため、
時には涸れそうなエネルギーをチャージするため、
毎年通ってくださいました。
彼には夢がありました。
「やりたいこと」がある・・・それだけでも尊いことなのに、
奇跡的にもその意志を維持し、
毎日 早朝に英会話を身につけ、ひたむきに努め、
いよいよ世界へと羽ばたきました。
「僕は世界中で一番弱い男です。」と言った彼が、
夢を一途に求め続け、未来への階段を登って行く背中を、
私は掌を合わせて見守らせて頂いております。
尊い出会いを賜って。
出会いはいつも、祈りの中で授かった奇跡です。
『あの頃は大変だったけれど、人生が変わりました!』と、(お金を支払って)
報告においでくださる方がいる・・・身に余る果報です。