何年も前のこと、出会ったばかりの方に訊かれたことがありました。

 

「上司に、『あなたは今日一日何をしていましたか?』と訊かれたことがありますが、

そんなことを訊かれたって私の仕事は雑多で、

コレとコレ…と並べて言えるようなことではなかったのです。

私はどう答えたらよかったと思いますか?」

 

上司の方は、本当に「何をしていたか」を知りたかったのでしょうか?

どんな気持ちで、そう訊いたのでしょう。

 

通訳すると、

私は、あなたの仕事の仕方に課題を感じています。

あなたがここで期待されていることと、現状との間にズレがあるように見えます。

そのことをあなたにわかってほしいのですが、一緒に振り返ってみませんか?

 

という真意があったかもしれません。

 

耳に聞こえる「言葉  奥にある真意を汲めると、

相手との間の風通しが良くなります。

 

何年も前のことを、その方が持ち出して私に訊いたのは、

それがうまくいかなかったからだと覗えます。

どうして真意を汲めなかったのか、

『我』が邪魔をしたからだと思います。

 

「そういいますけど何か…?

私だって、こんなに仕事しています。

そんなふうに訊かれたって答えられるわけがないでしょう。

何を言っているんですか?」

と、怒りが反応して、聴く耳をふさいでしまったのかもしれません。

 

自分の想いをいったん脇に置いて、

 

この人は今、何を伝えたいのだろう?」と

相手の言葉の奥にある「わかってほしい想い」を感じ取れたらいいですね。

 

あの時、そんなふうに答えていたらよかった。

何も答えられなかったから。