10年も前のこと、
セラピールームのソファに座るなり、
「僕は前世なんか信じません!」
とおっしゃった方がおりました。
以下、本人の了解を得てありますので、ご紹介します。
その方は、一流企業の超エリートでしたが、
仕事上の苦しみに直面しており、
苦しみのあまり,
一週間後の予約が待てないと、
急遽、夜間においでになったのでした。
「僕は前世なんか信じません。しかし、先生を信頼して来ました。」
その方は、催眠状態になるなり、前世の追体験が始まりました。
前世があるとは信じていなくても、
潜在意識はすべてを解って応援してくれます。
彼に必要な体験が、
人智を超えた働きで、自然に行われるのです。
前世があると信じられなくても、彼は前世を追想し始めました。
苦難を乗り越え、仕事で成功して、充実して生きていた前世でした。
死後、肉体を離れて還った「魂の故郷」(中間世)で、
マスター(内なる助言者)に会いました。
マスターは大きな杖を持った白い髭の仙人のような姿で現れ、
彼としばらく対話しました。
仕事上の大失敗をして顧客に迷惑をかけて、
周囲の自分を見る目が変わった状況で、
自死をも思わずにいられない弱った彼に、
マスターは言いました。
「お前は元々強過ぎるほどの男で、
人の顔色に気を遣うような性格ではない。
人の顔色など、気にしなさ過ぎる男だ。
だが将来、お前は大きな仕事をするようになる。
その時のために、本来の性格と真逆の
今の苦しみを体験しておくことは必要なのだ。」
苦しみのあまり転職を考えていた彼は、食いつきました!
「僕に次に用意されている仕事は何ですか?」
マスターは笑って、
「教えられない。」と言ったそうです。
彼は、両手で顔を覆って、「教えられないって…」とつぶやいて
しばらく沈黙した後、
「護られていたんだー! 」
と言いました。
死にたいほどの苦しみさえ、
護られて導かれていたのだと知ったのです。
これが、膠着した彼の心に風穴を開けました。
催眠セラピーは、どこで心に変化をもたらすか、
やってみなければわかりません。
人が計算して行うものではありません。
それから彼は、録音したテープを、毎日聴き返したそうです。
(当時はカセットテープを渡していた)
数日後、奥様からの電話で知りました。
「主人は、あんなことを言う人ではありません。
あれは紛れもなくマスターの言葉です。」
彼の本来の予約日(1週間後)には奥様がセラピーにおいでになりました。
彼は一度のセッションで大きな苦しみを乗り越える勇気を得ました。
「僕は前世なんか信じません。しかし、先生を信頼して来ました。」
私を信頼して来た…これは、すなわち
自分の潜在意識を信頼した という宣言だったのです。
催眠セラピーは、生きて直面する苦しみを、
根源的な視野で見直し、本質的な解決を導きだすものです。
それはまさしく、人智を超えた働きのもとに進行します。
私が誘導しているかに見えて、実は
あまりにも有能な自分自身の潜在意識が誘導してくれます。
それに私がついて行きます。
その潜在意識を信頼して、ゆだねると、然るべく与えられます。
あなたに今 最も必要なことを、
あなたが最も受け取りやすい形に アレンジされてまでも。