「転生の過程においては、必ずしもその能力に合った仕事をするとは限りません。」
この一文を読んで、「そうだ!」と思い当たりました。
高橋信次著「心の対話」(副題)人の言葉 天の言葉――を読んでいたのです。
信次氏は、「あなたが生まれてきた理由(わけ)」の著者、高橋佳子氏の父上です。
http://blog.livedoor.jp/therayume/archives/2009-10.html
(ブログ:「あなたが生まれてきた理由」)
信次氏いわく、
『人にはそれぞれ能力の差、得手、不得手がありますが、転生の過程においては、必ずしもその能力に合った仕事をするとは限りません。』と。
それを読んで、鉄道も通らない山村で生きた、ある夫婦を思い出しました。
子だくさんの家で、40代の夫婦が年をおかずに病死しました。
遺された長女トモエさんは、まだ19歳でした。
祖母と、6人の弟妹を抱えて途方に暮れました。
泣いてばかりはいられません。
妹や弟たちにご飯を食べさせ、学校に行かせなければならず、
早朝から日が暮れるまで、田畑で働きづめでした。
野良仕事をしながらそれを見ていたのが、誠さんでした。
誠さんも、一昨年に同じ病で両親を亡くし、長兄と力を合わせて
家を守っておりました。
毎日毎日、身を惜しまず働くトモエさんを見守るうちに、
心を通わせ、誠さんはトモエさんの家に婿入りしました。
トモエさんの弟妹たちを育て・・・
そして自分たちの子どもが生まれ、
トモエさんは母乳がうまく出なくて、粉ミルクを買えず、
米のとぎ汁を温めて飲ませたそうです。
「この子、育ってくれるかな…」と案じながら育てたそうです。
冬になれば山村では仕事がないから
誠さんは出稼ぎに行き、家族を養いました。
やがて孫たちが誕生し、にぎやかになりました。
「おらの家は、学校生徒がいない年がなかった。
結婚して以来、ずっと学校に稼ぎを払いっぱなしだ!」
と、真っ黒に日焼けした顔で笑っていました。
話しているうちに、誠さんに、
こんな山村で農作業して生涯を送るには似つかわしくない資質の高さを感じ、
訊いてみました。
「若いころ、他の職業に就きたいと思ったことがないの?」
「警察官になるつもりだったけれど、
父親が亡くなってしまって、兄を助けたくて家に残った。」
誠さんは警察官になることを諦めて兄を手伝い、
お兄さんとは生涯、仲良く力を合わせておりました。
誠さんが一緒に生きてくれたから、
トモエさんはどんなに心強かったことでしょう。
「お婿さんに入って頂ける」ことは、ただの ありがとう、ではありません。
トモエさんは、わかっていました。
化粧なんか一度もしたことがないと言うトモエさんの肌は、つやつやでした。
指輪なんかしたことのないトモエさんに、
ダイヤモンドのついた指輪を贈りたくて、指を計ったら・・・
サイズは「16」大柄の私より太い指でしたっけ。
この家を支えてきたその手、その指、・・・
お世話になった皆が感謝しています。
遠慮しなくて いいんだよ。
痴呆になったって、トモエさんは トモエさんだよ。
トモエさんが忘れたって、私たちは忘れない。
ありがとう、トモエさん。
空の上から、お日様のように誠さんが見守っているよね。
お天道様は いつも味方だったね。
ありがとう、ありがとう。
いっぱい、いっぱい、伝えきれない ありがとう。
トモエさんと誠さんに出会えて、よかった。
あなたが育てた子どもさんに、私も助けてもらいました。